クリュミケールは子供でプレゼントを貰う側だからお前(カシル)が配れと主張するシュイアさんと一方的に兄に責められているカシルの図。



『ニキータ組の小話』


クリスマスも近いので、子供組にプレゼントを配ることにした。

まあ、まだ子供と言えるのは十七歳であるアドルだ。(それでもいい歳だが)

しかし、この場にいない者を挙げると、もう二十歳を過ぎているカルトルートもクリュミケールにとっては子供らしい。

クリュミケール曰く、『カルーは自分からしたらいつまで経っても子供だし?』なんて、誰にも伝わらない屁理屈を言うのみである。カルトルートがクリュミケールの弟だと知っているのはクリュミケールとクレスルドとラズのみだから、他の者には伝わらない。

だがまあ、ここにカルトルートはいない。彼は宛のない旅に出たままだ。


というわけで、クリスマスプレゼントを貰えるのはアドルだけである。


「まあ、プレゼントというか、俺は手料理だけどな!アドルの好物まみれにするぜ」


と、キャンドルが言い、


「オレはカシルと一緒に割り勘して、アドルに新しい服一式を買ったよ。アドル、遠慮してあんま新しいもの買わないからさ。じゃあ、オレが夜中にこっそりレイラから貰ったサンタの服でも着てアドルの枕元に置いとくかな!ついでにアドルの寝顔を堪能してくるよ」


と、クリュミケールが言う。


「お前が真夜中に気配消して枕元にいたら、なんか暗殺でもされそうだな。ってか堪能するな変態!」


キャンドルはそう叫んだ。

そうこう話していると、たまたまニキータ村に顔を出しに来たシュイアがカシルと共にこちらに来る。

リオラは仲良くなったフィレアに会いに、レイラフォードでゆっくりしているらしいーーと言うのは建前で、クリュミケールに会いに来るのが恥ずかしいらしい。

なぜ恥ずかしいのか、リオラの心境の変化はいまいちわからないが。


ーーリオラの様態は日に日に悪くなる一方らしいが、それでもまだ、クリュミケールは希望を捨てきれない。できるなら、自分より長生きしてほしい。

クリュミケールにとってリオラは、大きな妹のような、子供のような存在なのだから。

そんなことを考えていると、シュイアがこちらを睨むように見ていて、カシルはげんなりとするような顔をしていた。


「シュイアさん‥‥どっ、どうしたんですか?そんなにこわい顔で‥‥わっ、私が何かしましたか?それともカシルが何かしたんですか?」


クリュミケールが聞けば、


「‥‥なんで子供の君が子供にプレゼントを渡さなきゃいけないんだってシュイアがうるさいんだ‥‥」

「当たり前だろう、リオは子供だぞ。貰う側だろう。俺はちゃんとリオに用意しているぞ」


シュイアがカシルに言えば、カシルは逃げるようにクリュミケールの背後に回り、


「あいつ、君をいくつだと認識してるんだ。いや、わかってるはずなのに‥‥小さい頃の俺達が君に世話になったことすら忘れたのかってくらい、あいつは君のこと子供扱いするんだが」

「‥‥いいんだカシル。シュイアさんはその、うん、いつまで経ってもオレが子供に見えてるんだろう‥‥いや、だったらキャンドルだってシュイアさんとカシルからしたら子供!?なぜならオレの実年齢は26だ!キャンドルは25歳なんだぞ!」

「えっ!!!!俺ってクリュミケールより年下なの!?じゃあ俺にもプレゼント下さいおとうさん!」


なんて、キャンドルが悪のりするので、シュイアは護身用のナイフを取り出した。


「なぜお前にお父さんと呼ばれねばならない」

「だだだだだだって、俺たちニキータに住む人間は皆、家族だから‥‥と言うかシュイアさんよ、いい加減、子離れした方が‥‥‥‥いや、なんでもないっす」 


そんなこんなでどうでもいいキャンドルとシュイアの言い合いが始まった。


それを遠目から見ていたアドルはーー‥‥


(全部、丸聞こえなんですけど。って言うか、おれだってもうそんな子供じゃないんだけどな‥‥クリュミケールさんも兄さん達もいつまでおれを子供扱いするんだか。とりあえず、今日の晩ごはんは楽しみだけど、夜はクリュミケールさんが来るのか‥‥ちゃんと寝たフリしとかなきゃな‥‥)


そう思いながら、こっそり家に帰った。